そうだ、朝というのはどうしても、異物を異物として認識させる強制力を持つ。
例えば、射しこむ朝陽。
例えば、波打つシーツ。
例えば、きらきらの輪郭。
純白に見せかけた空間の中では、彼の、孔雀色の瞳 純色のスーツ 黒手袋 まだらの髪 は酷く浮いていた。それはもう、世界から拒絶されるかのように。
彼の存在は嘘で。
嘘は拒絶の象徴で。
拒絶の象徴を私が吐いていて。
ならば、私は彼を拒絶していて――?
「嘘なんて、そんな」
もう習性となってしまった愛想笑いを顔にはりつけて、彼の言葉を否定する。しかし化物はそれでは許してくれないようで、無言でかぶりをふった。
「それも嘘だ。ヤコ」
黒手袋がすっと降りてくる。暴力の色しか見せないと思っていたそれは、それこそ嘘のように優しく私を抱きしめた。
耳もとに囁かれる、化物の澄んだ声。
「異形に抱かれて、平気な人間があるものか。ヤコ、嘘を吐いて自己の精神衛生の保身をはかるくらいなら、我輩のモノになれ。すべて。体から、心から、すべて、この脳噛ネウロの所有物になってしまえ」
擬態しているだけあって、化物のぬくもりは人のようだった。冷えた方が温もりで緩みそうになる。
化物の頭の向こうに、かすんだ赤があった。偽物のぬくもりを感じながら、家畜には焼印が押されたんだっけなんて考える。私の焼印は――否、烙印はあの赤色だろうか。
「ねうろ」
「拒絶は認めん。ヤコ、我輩のモノになってしまえ」
囁く声は薬のように苦く、麻薬のように甘かった。
「……うそ、」
「黙れ」
化物の言葉に、私は朝陽を遮るように目を閉じる。
あぁ なんて、
優しくない
了