夜が明ける前はいつも泣きながらだれかを呼んでいる(ようすけくん、)きっとそのだれかは失ってしまった人だからあたしは涙が流れるのを止める術がなくて(ねぇ)ただ嗚咽が漏れるのを聞くことしかできない(ようすけ、くん)訃報をもらったわけでも死体を抱いたわけでもないのにだれかが消えてしまったと確信を持てるのは、だれかを感じるわたしが死んでしまったから。だってあんな海のなかにおちてしまったらいきているはずがないじゃない(そうでしょ?)あんなとりにおそわれたらだれだってしんじゃうじゃない(こわいの)(ようすけくん)
(――ちゃん)
だれかがだれかのなまえを呼んでる(だれのなまえ?)ちがうよ(ようすけくん)あたしはもうそんななまえじゃない(新しいなまえがあるの)もうもどれないんだ(ごめんね、でも)あなたがいないから(ようすけくんが)あなたがいないからあなたを知ってるわたしも消えてしまったの(ばいばい)消えるのは怖かったけどあなたがいなければあたしはここにいられなかったの(ようすけくんがいないなんて)助けて(きみがいないなんて)(せかいはまっくらになってしまうから)だからあたしはあなたを忘れたし自分だって忘れたの(さよなら)
目が覚める前の一瞬、アイデンティティーを混乱させたわたしは、いつだってうなされながらだれかを恨んであたしを確立する。――きっとすぐに忘れてしまうけれど。
了