■注意
■非コロシアイ生活
■R18習作 ■つまり性描写を含みます。
「んっ……! きょっ……だい、……っ、大丈夫、か……?」
僕に挿入するたびに、インクの切れかけたサインペンみたいにかすれた声で、兄弟は僕の身を案じる。耳のすぐそばで喋るものだから、触れた吐息の熱をそのまま言葉の熱のように錯覚してしまう。熱エネルギーの移動は精神世界でも起こりうるのか、沸点を越えたと思っていた心がさらに加熱されていく。ぐらぐらと沸いているのは肉体なのか欲望なのか。両者の区別をつけることに、今更大した意味はない。僕は、侵入してきた兄弟の肉を、腰の筋肉を使ってきゅっとしめつけた。
「あぁ、構わっ、ない……続けて、く、れ……っ」
「あっ! ばか、てめっ……それっ、ズルっ……んはぁっ」
広い肩を震わせて、兄弟はぐっと両目をつむる。僕が与えた刺激が快楽のさざ波となって、腰からつむじまで走っていくのが見えるようだ。兄弟がベッドについたを手を握りしめる。僕の頭の下にあるシーツがひきつれた。
「兄弟、よぉ……。入れたばっかだってのに……ずいぶん、歓迎して、くれんじゃ……ねぇか」
ぱちりとまぶたを開いて兄弟が僕を睨みつける。僕の目の真上にきた薄紫は荒い言葉とは裏腹に、甘い熱で浮かされていた。はぁはぁと息を吐くたび、熱くて湿った呼気が落ちてくる。体の深奥から吐きだされるそれは、魂のかけらのようだ。待機とは明らかに違う温度を吸うたび、僕はひそかに兄弟の魂を吸った気になっていた。唾液が落ちてきたって、飲みこんでしまうだろう。
いつもしっかりと固めている兄弟の髪は、ほつれ、つぶれ、とっくの昔に悲惨な姿になっていた。それでもまだ大体の原形を保っているのは兄弟の気合のなせる技だろうか。彼のトレードマークともいえる髪型が崩れるのも構わずに、兄弟は僕の頬にキスをする。
「あぅ……っ」
甘い熱に浮かされているのは兄弟だけではない。乾いてすこし固くなった唇が触れただけだというのに、体の芯がぶるっと跳ねる。
「いい、声、してんな」
「やめてくれ……」
からかうような睦言にはまだ慣れない。顔をそむけると、片手で顎をつかんで元の位置に戻された。抗議しようと開いた口に、軟体動物みたいな兄弟の舌が入りこむ。
「んはぁ……なっ……んっ、ふぁ……ぁ」
力強く侵攻する舌が、僕の舌をしごくように舐めあげる。唾液がにゅるにゅる滑って、口の端からたれ落ちていった。顎をつかむ指にかかってしまうと危惧して、ぬぐおうとのばした手はしかし、もう片方の手でベッドに縫いとめられてしまう。
「……あっ……もぅ……、やっ、あぁ……」
かすかに首をふっても、兄弟の舌は離れない。逃げようとする僕を追って、下半身までもが前進する。狭い穴につまる熱の動きは、わずかであろうと簡単に僕の体をよじらせた。
「んぁっ、はっ……」
「あっ、あっ、ば、かっ……!」
腰をひねったせいで、兄弟の熱と僕の肉がぐりゅんとこすれあう。強い刺激に、兄弟の上体が弓なりになる。急に抜いた舌がら唾が飛んで、薄暗い部屋に一瞬だけ白い弧が生じた。
「ひぃ、やっ! そん……あっ、急、にぃ……っ」
「だっ……て、てめぇが……っ、いきなし、動くっ……からっ!」
悲鳴をあげる僕に、兄弟は口をとがらせる。互いに肩で息をして、その呼吸すら、つながっている場所を間断なく刺激する。兄弟は片手で顔を覆っていた。爆発しそうなのをこらえているのだろう。僕のそれも、いつ限界をむかえても不思議ではなかった。
「もっ、もう、……いいっ、から。大丈夫、だ。だっ……から」
腕をもちあげて抱擁をねだると、兄弟は僕の肩のすぐ横に手をついた。ついばむようなキスをして、彼の背に両腕をまわす。真下から見あげる兄弟の眉間にはぐっとシワがよっていたけれど、両目にはキラキラした光が灯っていた。
「なにが、イイんだよ」
熱い息と一緒に、軽口が飛んでくる。僕が慣れていないのをわかったうえで、兄弟はいじわるなことを言う。幼い男の子は好きな子をいじめるというが、兄弟もその域から脱せていないのかもしれない。ついさっきまでアダルトな接吻を交わしていた口の端がへらっと、いたずらっ子のようにめくれていた。
そのままでは自分だって苦しいくせに。僕が言うのは癪だったので、ぷいっと視線をそらす。
「きょ、兄弟が、考えたまえ……」
「てめっ、生意気ぬかしてんじゃねーぞ!」
言うが否や、兄弟はぐっ、と熱を押しつけた。ひっと息を飲む僕に構わず腰を引いて、再度ガツンとおし入ってくる。
「あっ! あっ、うっ……! そ……んなっ……ぁっ。は、激しっ、やっ……あぁ、はっ、……ひぅ……ひど……っ」
「んなっ、ことっ、言ってよぉ! しめつけてっ、兄弟のっ……ほっ、が、離さ……ねっ、じゃっ! ねぇ……かぁ!」
「そんあ、きょうだっ、いっ……ぼく、僕はぁ……そん……つもっ、じゃ……」
開始された激しい抜きさしに、声が止まらなくなる。熱は急激にふくれあがり、理性でもってせきとめることはできなかった。
「もっ、だめ……ぇ……だめっ、だ!」
一番さきっちょで、奥をぎゅっとねじ押される。もう、声にすらならずに息の塊を吐いた。ぎゅっと兄弟の背にしがみつくと、再び耳打ちされる。
「いーから。イっちまえ」
こんなときになって、兄弟の声はいたわるような優しさをにじませていた。直接的な快感だけなら耐えられたかもしれないが、鼓膜を愛撫する低音と一緒ではこらえきれない。目の奥で白い星が爆ぜた。
「あ。あっ、ああああああっ……」
びゅるびゅると、情けない声と共に白濁が飛ぶ。腹に着地した液は、すぐに干あがってしまうのではないかと思うくらい熱かった。一息遅れて、体内で熱が爆ぜる。くぐもった声が再度耳に触れ、僕のそれは出しきったばかりだというのに小さく反応した。
僕の胸の上に身を預けている兄弟は気づいたのだろう。熱い息を吐きだしながら尋ねる。
「おめぇ、もう一回ヤりてぇの?」
「ち、ちがっ……」
「ウソついてんじゃねーよ」
腹をよせて、兄弟は僕のそれを押した。敏感なままのところを雑に扱われて、なのに僕はそれを嬉しいと感じてしまう。僕のなかにいる兄弟の熱は、再び固くなり始めていたからだ。
「俺も……だから、よ」
「うん。そう、だな……」
僕たちは再び視線を絡ませあって、口づけた。唇が触れる一瞬前、自分も兄弟と同じく熱すぎる吐息を発していることに気がついた。兄弟は躊躇なく息ごと僕にくらいつく。ああ、きっと兄弟も僕の魂を吸っている。肺のなかでまざりあう僕らの魂をまぶたの裏に描きながら、僕は自分から兄弟の舌を舐めあげた。
了