手をつなぐ、ということ。
宿主の薄い手のひらを軽く握るということ。
夕暮れのオレンジ色に目を細めながら、並んで歩くということ。
指を絡めてみて、強く握ったらどうなるのか、横顔をうかがうということ。
夕焼けの光だけでは言い訳できないほどに、赤くなった頬を見てこっそり笑うということ。
頭をなでる、ということ。
寝る前の宿主の長い髪の上に手をのせるということ。
つやつやの髪に指をつっこんで、ぐしゃぐしゃにするということ。
何がしたいの? と不思議がる宿主の目を見て、口の端をつりあげるということ。
布団をかぶらなければ寝れないこいつのために、そのまま布団を引きあげて、眠るまで見届けてやるということ。
抱きしめる、ということ。
ひょろい宿主を腕で包むということ。
目をつむって、互いの心臓が動く音を聞くということ。
女よりずっと抱き心地の悪い骨ばった体に存在を預けるということ。
夜の底でどうしようもない孤独と出会ったときに、確かな体温を感じるということ。
この手で、宿主を感じるということ。
それら全てを、オレは最初から持ちあわせていないのだ、と。
透けた手のひらを空にかざしてみる。
藍の天蓋の中央で、黄色の月が笑っていた。
了