■兄弟以前の族風紀
君を見ると目がチカチカするんだ、と、ばったり出くわした石丸清多夏がトートツに言ってきやがったから、大和田はケンカを売られているのかとしばし考えこんだ。日没まぎわ、人のいない廊下で、夕映えが燃えるように美しい放課後の事だった。
大和田くん、なぜだと思う? 僕は、君があんまりにも乱れた格好をしているものだから、僕の脳が受け入れられずに幻覚でもって拒絶しているのではないかという仮説も立ててみたんだが、と、腕組みをして黙りこむ。
石丸にしては歯切れが悪かったが、こりゃケンカを売ってんな。売ってるに違ぇねぇ。決めこんで指をポキポキ鳴らす。なんならもっとでっぇけ星見せてやってもいいんだぜ、と凄んでいる間にも、こめかみが三度ビキビキ痙攣しやがった。君はすぐ暴力に走るな、と石丸が吐き捨てる。クソみてぇな優等生になんと思われようが知ったことではなかった。トサカにきたなら、迷ってるヒマなんかねぇ。
「僕は、君がまぶしいのかとさえ、考えていたのに」
続く言葉が大和田の手を止めた。急速に頭が冷やされていくが、石丸の言いたいことはひとかけらだってわかりはしなかった。フリーズする大和田をよそに、僕の見こみ違いなんだろうな、失敬、と背をむけて去ってしまった。なにからなにまでトートツなヤツだった。行き場のない拳が選んだ落ちつき先は、見事な夕焼け色に染まった廊下の壁だった。殴った音は響かなかった。
了