要するに、好奇心だったのだろう。
眼前で波打っているシーツと同じように、真っ白になった頭でぼんやりと結論づけると、何もかもがきれいに説明がつくように思えた。私の裸体は白くなんてないのに、身を取り囲むものすべてが白いということが、酷くチグハグで笑えてしまう。喉の奥でくすくすやっていると、孔雀色の目で睨まれた。
「豆腐、我が輩は貴様に笑うことを許可した覚えはないのだが」
金と黒の頭髪をはやした長身痩躯の化物は、時代遅れのスカーフを巻いた、純色のスーツ姿に戻っていた。私はまだ白布を一枚纏っているだけなのに。さすがは化物、人とはバイタリティーが違うのかしら、なんて口には出さずに呟いてみる。
「うるさいなぁ。あんたに許可されなくったって、可笑しかったら勝手に笑うわよ」
頭では全然違うことを考えていたのに、脊髄反射で憎まれ口を叩いた自分に賞賛を送りたい。彼が言った通り、豆腐みたいに白くてふやふやになった頭の中では、お腹がすいたな、人間ってどんなにショックなことがあっても、とりあえず空腹にはなるんだ、とか思っていた。
平均よりかは薄いけれど、大事な胸を抱きしめながら、寝具の上で膝を立てる。体の天地を逆さにして、ゆうゆうと天井を歩行していた彼を捕まえようと、片腕だけを伸ばしてみる。
「なにをしている?」
「べつに、なにも」
眉間に皺が二本増えた。不良がカツアゲでもする時のように、不必要な程近距離に、彼が顔を寄せたものだから、些細な変化もよくわかる。
窓からさしこむ朝日が、引力に従っている髪の房をちかちか縁取っていた。茶色や黄色の髪ならよく見るけれど、本当に金色の髪なんて彼以外見たことがなかったものだから、私はその瞬きに目を奪われてしまった。輝きだけなら、プラチナかなにかに相当するんじゃないだろうか。
「我が輩をからかいたいのなら、もう少し後にしておけ。我が輩、今は寛容ではあるが、苛ついている。すぐにそのブンピツをやめるなら、不問にしてやろう」
ブンピツってなんだろう。異形を人に擬態させた彼は、時折私の知らない言葉を口走る。単に私が物を知らないだけかもしれないが、それでもこの文脈ではどのような意味をあてればいいのか、皆目見当がつかない。
それに、シチュエーションだけで判断するのなら、ここはもっと違う言葉をかけるのが筋というものじゃないだろうか。片方が人ではないとはいえ、男女が一緒に朝を迎えたのだ。王朝文化を適用して優雅な歌を詠めとは言わないけれど、いくら化物とはいったって、せめて優しい言葉の一つぐらい、かけてくれてもいいだろう。
腕を下ろす。朝の光の中で見る自分の腕は、夜が明ければ消えてしまう夢の浮橋のようだった。
夢と現をつなぐ橋。
化物と人をつなぐ橋。
夜は輪郭が曖昧で、一つになれたと思うのに、朝はくっきりと輪郭を浮き上がらせてしまう。夢は夢、現実は現実だと。化物は化物、人間は人間、つながることなどないのだと。